密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
「俺、先行くから」
隼人はクラシック音楽が流れるイヤホンを耳に入れると、足の遅い私を置いて朝日の中、一人で颯爽と走っていった。
どこかで見たストレートな青春ドラマのワンシーンのように。
永遠に置いていかれそうな気分になって……、寂しさが息を切らして込み上げてきた……。
胸が苦しくなった。
台風が過ぎ去った後の水嵩が増した多摩川が私の気持ちをそうさせたんだ。隼人が悪いわけじゃない。
翌日、私は隼人がエントリーしている『都民マラソン2014』にエントリーした。開催日は五ヶ月後。
隼人の好きなものを私も好きになりたい。隼人と一緒に走って、健康的な汗を流したい。
目標というハードルを同じ高さに設定して私もそれを飛び越え、達成したい。