密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

 ふむふむ。どうやらここはホテルらしい。幸いな事にラブホテルではない。


 アンティーク調のモダンな家具にほどよくスプリングのきいたベッド。

 高級な織り絨毯の上に、点在している私のスーツとブラウス、下着、ストッキング。

 窓の外、白いベランダの向こうには東京タワーが見えている。

 大人な上質な空間にほんの少しだけ安堵したが、それと同時に泣けてきた。


 私の隣に誰もいなかったから……。


 広いダブルベッドの空間が、より広く感じた。魂が旅立った直後の抜け殻のように。

 命は尽き果てたのか、それとも蛹は蝶となり願いを叶えたのだろうか。



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