密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~

 一体、どんな男と寝たのだろう。


 昨夜は仕事帰りに一人で行きつけのBarへ行き、キャンドルが揺れるカウンターで胃の容量なんて考えずになにかを失うほど飲んだ。BGMは古いレコードと寡黙なマスターの呟き。

 体が熱くなって、更に芯まで熱くなって……。

 きっと二度目の熱さはこの部屋で行われた行為だろう。

 一ヶ月前、彼氏にフラれた。そんな事で自棄になるなんて私らしくない。

 男に頼らなくても生きていける経済力がある。貯蓄もある。スキルだって日々増えている。自分を取り繕う言葉も覚えた。これから先も十分満足のいく生活が送れる。だからフラれたくらいで自棄になるなんて……。

 
 私らしくないと思えば思うほど悲しくなった。

 これじゃキャバレーから放り出され、誰の記憶にも残らず、アスファルトに転がる客みたい。

 ぬるく淀んだ涙が頬を伝う。

 無抵抗な裸体をベッドの上で小さく丸めて泣いた。



< 134 / 304 >

この作品をシェア

pagetop