密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
ねえ……私らしい、ってなに?
そんなの考えなくていい、と言うように、唇と唇が重なった。
ぷっくりとした私の唇が薄めだけど柔らかいその唇で塞がれている。
目立つほど白い私の肌がチェリーのように高揚していく。細い身体が強く抱き寄せられ、長い髪が揺れながら背中を滑る。
久しぶりの感覚に目眩がしそう。
磁石のように引き合う二人の命。心音を確かめ合うかのように重ねてみる。
「俺の名前は大地。二十三。よろしく」
「私の名前は深雪。……三十七歳。よろしくお願いします」
可愛いキスを何度も何度も重ねながらの自己紹介。
私たちには生まれてきた時に親に希望を託された名前がある。
その名前を大切にする大地くんはきっと命を大切にする人。
生まれてきてよかった。
私らしさをキスで塞がれながら朝陽の中でそう思っていた。
【生まれてきてよかった*END】