密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 二年ぶりに訪れた母校、若葉南高校。
 
 三年A組の教室で佐久間先生を待つ私はチョークという懐かしい匂いを感じていた。

 それは、学生の頃には気づかなかった秘密の匂い。

 黒板の前でそれに手をのばした瞬間、ドアが開いて佐久間先生が入ってきた。

「おう、星野、元気だったか?」

「うん。先生は?」

「元気だけどな……すまん星野!!」

 佐久間先生はそう言うと切れ長の目を曇らせて申し訳なさそうに頭を下げた。

 明日は成人式。



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