密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 事件直後、店の前にマスコミが荒波のように音を立てて押し寄せてきた。

 テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ。野次馬もいる。

 カメラのフラッシュが瞬きのスピードでチカチカと偽物の星となり煌めく。

 私は不安定に揺らいでしまう灰色の視線を有名ブランドの大きなサングラスで隠し、真っ赤な口元をマスクで覆った。


 無愛想に突きつけられるマイクを撥ね除けた。

 それでもしつこく聞きたがるから、記者の足を思いきり踏みつけてやった。黒いヒールの踵で。


 興味本位に見聞きされるのは不愉快以上に苛立つ。


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