密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 黒い空から垂れ下がる白い霧状の線。手繰り寄せようとするけど、すり抜けてしまう。この手はまるでスケルトン。もうなにも掴めない。酸素を吸うつもりが押し返してしまい、天を間近に足元から地に溺れていく。

 夢から覚めて、気分が悪くなるくらい重い瞼が開いた。目の前には智久の姿があった。

 気分が悪くなるくらい重い瞼を開けたのは、私だった。

 左足に走る激痛。

 私、生きてる。

 筋肉、関節、皮膚、あらゆる所に痛みが電流となり走っていく。

「莉緒奈、莉緒奈!!」

 智久が私の名前を呼んでいる。
 
「智久……」

「あぁ、よかった。俺、莉緒奈がいなくなったら」 





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