密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 入学してすぐ、サッカー部の松重先輩に一目惚れした。鮮やかなシュートが私のハートに打ち込まれ、安住くんへの想いは告白もしないまま、シャボン玉のようにどこかへ消えた。

 放課後、ボールを追いかけグラウンドを走る松重先輩の姿を教室のベランダから見ていた。


 蝉の声。

 今日こそ告白しようと学校から続く坂の下にあるバス停で松重先輩が来るのを待った。

 松重先輩はいつも一人でこのバス停からバスに乗る。だけどその日に限ってサッカー部のメンバーと一緒。

 『告白するために待っていた』とみんなに思われるのが恥ずかしくなった私は、自販機の陰に身を隠した。

 十分後。来たバスに乗り込んだ松重先輩とサッカー部のメンバーたちを自販機の陰から見送った。

 自販機の発熱と夏の陽射し。

 汗で濡れ、透けたブラウスが身体に貼りついた。

 熱中症間近の暑くて長い一日だった。




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