密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 そんな答えを得るなら得ない方がよかった。

 付き合って三年も過ぎるとこんな感じになるのかな。


 付き合い始めた頃はこうじゃなかったのに。待ち合わせ場所に二人して三十分前に着いて、「早い」って太陽の下で笑ってたよね。


 早く着くのは早く会いたいから。


 でも今は私と一緒に出掛けるより、一人で寝ていたいんだね。

「もう別れようか」

 その浅黒い一言が私の細い喉を過ぎて出かかったけど、クリスマスケーキの真っ赤な苺と共に無理やり飲み込んだ。まだ言ってはいけないと思った。

 その直後にあなたがプレゼントをくれた。

「あゆみ、これ。そのうち行こう」

 それは、遊園地のペア入場券だった。泣けちゃうくらい嬉しくて、あなたが灰皿に置いた煙草の先端がトナカイの赤鼻に見えた。

 窓の向こうでは、しとしと降っていた雨がひらひら舞う雪に変わっていた。




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