密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 その後、二人の休みがなかなか合わなくて、デートらしいデートはなし。

 あったのは身体の関係だけ。桜が満開になったその夜、私の優しさが吸いつくされた。

 遊園地はお預け状態のまま季節は音速で過ぎ去り、夏が来た。

 夏休みは一緒にとろうと、約束をしていたから、私はそれを楽しみに仕事を頑張ってきた。

 あなたも今日から夏休み。勿論、今日が遊園地でデートの日だという事も知っている。

 
 でも来ない。ケータイの電源も切れてる。あなたの存在している気配すらもない……。

 あなたがくれた入場券でしょ……。



 ソフトクリームを持った私の横を子供たちが楽しそうに通り過ぎていく。


 その向こうで青い風船を持ったピエロが、悲しげに私を見ていた。



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