密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
そういえば、子供の頃、遊園地で迷子になった記憶がある。
覚えているのは、気づくと両親の姿がなかった事と、泣いていた私の目の前にソフトクリームが現れた事。
見ると、ピエロが私にソフトクリームを差し出していた。
ピエロは、それを食べて泣き止んだ私を抱き上げて、迷子センターまで連れていってくれたんだった。
「大丈夫だよ。すぐに見つかるからね」
ピエロの声を初めて聞いた瞬間だった。
それまで少し怖いと思っていたその顔が急に優しく思えた。
迷子センターに着くと、お姉さんが絵本を読んでくれた。
───森の中へ迷い込んだ女の子が見つけた黄金のリンゴ。
黄金のリンゴはエメラルドの木にたったひとつだけ実っていました。女の子はきれいなものには毒があるかもしれないと思いましたが、三日三晩なにも食べず、行く当てのない森をただただ歩いていたので、それに手を伸ばしてしまいました。
宝物をなくし、希望を失っていた女の子。
もう怖いものなどないと目を瞑って黄金のリンゴをかじった瞬間、風の流れが変わり、エメラルドの葉が静かに揺れているのがわかりました。
ゆっくりと目を開けたら、そこには白馬に乗った素敵な王子様がいて、女の子はお姫様になりました───というお話。
その絵本の最後のページが捲られた時、両親の姿が見えた。
私は無くしてしまった宝物が見つかったかのように泣きながら母に抱きついた。そんな私を母はぎゅっと抱き締めてくれた。
ピエロにお礼を言おうと周りを見ると、もうその姿はなく、再び、宝物を無くしたようなすごく寂しい気持ちになった。
私は今、迷子になった時と同じような気分でいる。
覚えているのは、気づくと両親の姿がなかった事と、泣いていた私の目の前にソフトクリームが現れた事。
見ると、ピエロが私にソフトクリームを差し出していた。
ピエロは、それを食べて泣き止んだ私を抱き上げて、迷子センターまで連れていってくれたんだった。
「大丈夫だよ。すぐに見つかるからね」
ピエロの声を初めて聞いた瞬間だった。
それまで少し怖いと思っていたその顔が急に優しく思えた。
迷子センターに着くと、お姉さんが絵本を読んでくれた。
───森の中へ迷い込んだ女の子が見つけた黄金のリンゴ。
黄金のリンゴはエメラルドの木にたったひとつだけ実っていました。女の子はきれいなものには毒があるかもしれないと思いましたが、三日三晩なにも食べず、行く当てのない森をただただ歩いていたので、それに手を伸ばしてしまいました。
宝物をなくし、希望を失っていた女の子。
もう怖いものなどないと目を瞑って黄金のリンゴをかじった瞬間、風の流れが変わり、エメラルドの葉が静かに揺れているのがわかりました。
ゆっくりと目を開けたら、そこには白馬に乗った素敵な王子様がいて、女の子はお姫様になりました───というお話。
その絵本の最後のページが捲られた時、両親の姿が見えた。
私は無くしてしまった宝物が見つかったかのように泣きながら母に抱きついた。そんな私を母はぎゅっと抱き締めてくれた。
ピエロにお礼を言おうと周りを見ると、もうその姿はなく、再び、宝物を無くしたようなすごく寂しい気持ちになった。
私は今、迷子になった時と同じような気分でいる。