密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 専業主婦だからラクでいいわね。子供もいないなら尚更よね。三食昼寝つき。

 なんの文句もないでしょ、と周囲の人たちに思われている。


 特に亮のお母さん、姑の風当たりは強い。

 ───同じ形をした住宅が建ち並ぶ希望ヶ丘。

 私と亮の家は隣同士で、物心がついた頃にはいつも一緒にいた。

 亮のお母さんは私を亮と同じように、ううん、それ以上に可愛がってくれた。

 
「うちには女の子がいないから」

 と、可愛い服や髪飾りがあると私のために買ってきてくれた。

 裁縫が得意で水色のワンピースやピンクのスカートを作ってくれた事もある。

 私の両親は共働きで帰りも遅い事が多かったから、亮の家で夕ご飯を食べたり、雨の日は塾までの送り迎えを亮のお母さんがしてくれた。

 子供の頃は良くしてくれたし、結婚した時も「真理ちゃんなら大歓迎よ。亮は幸せ者だわ」と、喜んでくれたのに。


「子供が作れないって知っててなんで結婚したの!!」

 と、亮に言っているのを聞いてしまった。誰から聞いたのかわからないが世の中って怖いと思った。




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