密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 足湯は二人で。後は男女別。

 露天風呂に注がれる太陽と流れ行く風、かけ流しの乳白色の温泉。

 ジャグジーや打たせ湯もあって、確かに気持ちよかったけど、腰まである長い髪をドライヤーで丁寧に乾かしたり、お風呂上がりにすぐお化粧をしないといけない大人の女性の気持ちを龍平は考えていない。

 以前、それに近い事を言ったら、

「面倒なら髪なんて切っちゃえよ。短い方が知的に見える。化粧なんてしなくていいから」

 と、経済新聞を読みながら無愛想に切り返された。

 龍平の父親は一部上場IT会社の社長。龍平もその会社で役員に就いている。

 子供の頃から裕福な生活を送ってきた龍平と一般家庭の小さな世界で生きてきた私の価値観はきっとこれからも合わないだろう。 




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