密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 心に背負っている沢山の荷物。それを捨てに陸橋に立つ。


 陸橋の下には貨物列車が通る線路が長く長くレールを伸ばしている。

 私の人生のレールはきっと何処かで真っ二つに切れていて、崖に落ちるようにできていたのだ。いや『何処かで』ではなく『近日中に』だろう。

 睡眠薬とアルコールで私の人生は崖っぷち。両親の不仲を見てきたから私は人生を共にするパートナーを見つける気力を無くしてしまった。

 茶髪の父が金髪の母をひっぱたく。

 金髪の母が茶髪の父を罵倒する。

 お互いがお互いを嘲笑う。

 幼かった私は恐ろしくなって、その度に押し入れに隠れた。

 父の奇声。ひっぱたく音。


 母の金切り声。皿が割れる音。


 時々、押し入れの襖の隙間から母が持つ包丁の刃が蛍光灯で光るのが見えた。その光りが押し入れの闇に射し込んで、ぞっとした。




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