密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 悪い大人と知り合えば仕事をもらえるだろうと繁華街をさまよい歩いた。身体を売るスカウトだけは拒否しながら。

 身体を売ってホテルで寝るより、寒くても暑くても公園や路上の方がよかった。

 まだ今よりは若干純粋だったから多少の倫理観があったのだと思う。

 そこでいつものスカウトとは違う誘いに巡り合い、中身のわからないバッグを千葉の船着き場から新宿まで運んだ。


 中身がなにかは知らなかったけど、法律に触れるようなバイトの連続だったと推測がつく。

 だからこそ普通の女の子がいいのだ。普通の女の子なら怪しまれない。

 実際捕まらなかった。


 深夜の倉庫で重いアタッシュケースと軽いアタッシュケースを交換した時は身が縮んだ。顎がガクガクして全身に震えが走った。

 取り引き相手のスーツ姿でマスクをつけた、ごついアジア系の男が如何にも怪しく、『ギラリ』と光る大きな目が恐ろしかったから。

 受け取ったアタッシュケースは車で待機していた組織の幹部に渡した。

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