密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
このままここにいたら眠らされて船で運ばれ臓器を摘出される。
あまりの恐さに涙が溢れ出し、喉が震えて声が出せなくなった。
「に、逃……げ……た、い。逃……げ……さ、させ……て」
それが必死になって絞り出した声だった。
逃げる手段のない私を国枝さんが自分のマンションへ匿ってくれた。
今まで見た事のないアメリカンスタイルの高級マンション。靴を脱がなくていい生活の始まりだった。
私の身体に指一本触れる事のない国枝さん。寝るのも別々の部屋。
人間は男も女も怖いと思っていた私にとって国枝さんは特別な存在になった。
私が「すず」と呼ばれるのが嫌だと言ったら、国枝さんは私を「りん」と呼んでくれた。
新しい人生というストーリーが幕を開けたようで、ただただ嬉しかった。