密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 カーテンの隙間から覗くように窓の外を見ると、国枝さんがアスファルトの上で胸から血を流し倒れていた。

 発砲音だったのだ。

 そして、撃たれたのは私の心臓ではなく、国枝さんの心臓。

 国枝さんは路上で射殺された。私にもよくわからない黒い組織に。国枝さんの身体はモノを扱うように白いワンボックスカーの中に引き摺り込まれた。

 このマンションにいると私も危ない。

 いずれ、誰かがこの部屋に来る。訪問者が黒い組織の連中でも、警察官でも、どちらにしろ私には不都合だ。

 そう思った私はキッチンの収納庫に国枝さんが隠していた札束をバッグに積め、逃げた。

 靴を脱がなくていい生活は、逃げやすくするためだったんだ、とわかった。

 その日は雲ひとつない快晴。

 三年間、ほとんど外に出ていなかった私の目に、太陽の光が乱反射して、眩しさをレーザーのように照射した。



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