密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 独り暮らしは過去のトラウマを現在よりもリアルに写し出した。

 茶髪の父。

 金髪の母。

 罵声。

 奇声。

 金切り声。

 ひっぱたく音。

 そして、包丁……。


 痛みが、ぶり返す。頬をひっぱたかれ、お尻を叩かれていた頃の消えない痛み。


 押し入れに今日もまた隠れる。


 解放されたい……。

 影のようなトラウマがつきまとうなら、影に追われて地を這うより、天空か地中へ逝きたい。できるなら、許されるなら国枝さんがいる所へ逝きたい……。



< 281 / 304 >

この作品をシェア

pagetop