密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 血液を冷ますように街中を歩く。身体はホットワイン。熱せられているのに指先が冷たい。

 特定の人だけを幸せにするサンタクロース。今年も私の前には現れなかった。クリスマスが終わったばかりの街が今度はお正月の準備を始め、行き交う人の足どりもなんだか忙しない。

 流れている街で、その忙しさから顔を逸らすように足を止めた。

 子供の頃、この時期になると吐く息が白いとはしゃいでいたっけ。そんな純粋さや無邪気さはもう持ち合わせていない。

 コートのポケットから紺色の手袋を出した瞬間『手相占い』の文字が目に映った。

 手袋をはめてしまう前に見てもらおうか。

 そう思い視線を上げ、私は自分の目を疑った。




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