密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 その占い師が同僚の廣田くんだったから。

「廣田くん?」

「松嶋さん」


 経理部の廣田くんは常に冷静で理論的で信じるのは弾かれる数字だけ。

 私のイメージでは廣田くんは正論で物事を突き詰めていくキッチリとした弁護士。占いなんて信じないタイプだと思っていた。


「夜の姿、見られてしまいましたね」


「ええ。見ちゃいました」


「両手を見せてもらえますか」


 差し出した両手に廣田くんの筋張った指が触れている。
 
 なんだか不思議。

 廣田くんは私が今思い悩んでいる事を明確に当ててみせた。



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