密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 そして、職業作家という道が整備され、レッドカーペットが敷かれた。

 亜希は、ただ『書く』だけではなく、沢山の本やシナリオを読んで、映画やドラマを数えきれないくらい見ていた。

 寝る間も惜しんで、『書く』という不安定なものに全身全霊を傾けていた。孤独と野心の狭間で屈折しそうになる自分を抑制して。

 その努力が報われたのだ。

 去年、大賞作がドラマ化されシナリオも亜希が担当した。これから先、シナリオライターとしても活躍するだろう。

 慎吾にもそうなってほしい。

 私のそんな思いを他所に、慎吾は漫画を描かなくなった。好きだった漫画雑誌も読まなくなった。

 失業手当をもらい始めてからその姿勢が顕著に現れた。深夜までテレビゲームやネットで遊んでいて、明け方ベッドに入り、夕方までそのままの状態。
 


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