密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 佐伯さんに赤ちゃんができた事を告げると、マンションの鍵をくれた。私は佐伯さんのマンションで暮らす事になった。


 家事は子供の頃からずっとやってきたから、主婦の真似事はすぐにできた。


 幸せだと、愛があると思っていたけど、それは私の思い違いだった。

 夕飯に肉じゃがを作ろうと近所のスーパーへ行き、一番手前に陳列されていた玉ねぎをカゴを入れた瞬間、突然、お腹に鈍痛が走り、次に襲ってきた激痛で気を失った。

 目が覚めるとそこは真っ白な病院で……。


 私のお腹の中にいるはずの赤ちゃんは消え去っていた。

 なにをやってもうまくいかない。最悪な事態がつきまとう性分なのだ。玉ねぎがいつもこの目にしみるように。



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