密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 風も揺らさないような図書館という静寂の中、舌と舌とを絡ませ合う音だけがしている。誰にも気づかれないようにちょっと遠慮しがちだけど熱いキス。

 私は図書館の匂いが苦手だから、この男が醸し出す甘ったるい匂いが必要以上に魅力的。


 一ヶ月前、退屈で手を伸ばしたフランスの恋愛小説。そこに暖かい男の手が重なった。

 偶然出会ったこの場所で私からキスをしたのが、この熱くて不自然な関係の始まりだった。



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