密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 いつの間にか会社の飲み会や女子会には呼ばれなくなり、ひとり寂しく孤立するようになった。

 孤立しても仕事は精一杯こなしたし、節約していても服や髪、爪は清潔にと心がけた。


 二十歳の誕生日に、誕生石であるアメジストのイヤリングを表参道のジュエリーショップで買って自分自身へ贈った。高価なものはそれ以外、なにも手にしていない。


 ここまで自分の力だけで真っ暗な部屋で生きてきたのだ。


 そんな経験が『雷のように鋭く、飲み込めないなにか』を急に込み上げさせ、はらはらと苦い涙をもたらした。 


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