密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
離れた二人の距離は次第に実際の距離より遠くなり、毎日が消化不良のような気分になって別れが訪れた。
出逢いも別れも結婚も全てはタイミング。
あの時『離れたくない』と冷静に、そして情熱的に成田空港から同じ飛行機に乗っていたら、今頃、私は水色の屋根の下で共にパンを焼いていた事だろう。
共に焼いたパンを持って港の見える丘公園で薔薇を見ながらデートをしたり、横浜スタジアムで野球観戦、結婚して子供ができたら家族三人で山下公園で遊んだり、動物園へ行ったり。
タイミングさえ合っていれば、そういう未来も描けていたのだと思う。
それはもう海外よりも遠く、宇宙の彼方に消えてしまった。手に入らなくなったものは想像以上に大きく感じる。
本来、どの程度のものだったのか、忘れてしまうんだ。シーンズのポケットの中で溶けてしまったベタつくだけの飴玉のように。