密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 次に佑介が来た時、グレーが居なくなっていたら淋しいだろうと思い、佑介が来ない日は私が与えるようになっていた。

 猫が特別好きな訳ではない。

 実家で柴犬のシロウを飼っているからどちらかと言えば犬派。

 たまに帰るとシロウは五分くらい凄い勢いで吠えた後、寄ってくる。シロウと私は微妙な関係。

「グレーと私も微妙な関係だよね……」

 私はキャットフードを食べているグレーの頭を撫でた。

「あのさ、その猫」

 喉を撫でるような甘くて低い声がして、体内が鼓動のように『ドク、ドクッ』と青く浮かぶ血管内を飛んで跳ねた。

 振り返ると隣に住んでいる城田さんがいた。

 コンビニの袋からお弁当とペットボトルのミネラルウォーターが透けて見えている。仕事帰りだろうか。

 いつも優しく挨拶を交わしてくれる城田さんの職業が何故だか気になっていた。

 子供が好きそうな感じがするから、保育士さんかな。そうだとしたら、小さな女の子の胸は初恋という甘いキャンディになって溶けてしまいそう。



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