密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 病院からどんなに離れていても私は入院患者さんの顔や声が思い浮かぶ。

 皆変わりなく夕食を食べているだろうか。

 どこか痛いと苦しんでいないだろうか。

 薬の副作用は出ていないだろうか。
 
 勤務時間外で離れていてもそう思うのは患者さんの死に慣れてしまった自分への戒めなのかもしれない。

 どの命も平等に尊い。命に偏見などない。命に『優、良、可』をつける人には天罰が下ればいい。

 それなのに私にはどうしても救えない命がありすぎる。



< 94 / 304 >

この作品をシェア

pagetop