花の名前
病室につくと、彼は、窓際のベッドの上に起き上がっていた。


そして、あたしを見つけると、ちょっと笑ってくれた。


半袖からのぞく腕は、切り傷の跡でいっぱいだった。


ああ、この人もあたしと一緒だったんだ。と思った。


あたしに言った言葉は、自分に言い聞かせてたんだ。


さっき届いた画用紙を、彼の手の上に乗せる。


彼は、それを無言で見ると、目に、たくさんの涙を浮かべた。
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