love or friends
ーーーーー

「…っという訳で、私と一緒に便乗してメアドゲットに至ったのはいいんだけどー…」
「うーん…」
「初メールを何て送っていいかわからずに唸ってる訳ね。ゆりなは。」
「そーいうこと。」
「あゆなもみっちゃんも喋ってないでメールの内容、考えてよーぅ」
「やーよ、めんどくさい。」
「みっちゃん見捨てないでーっ」

みっちゃんこと遠山みつきは中学、高校と同じで
進学先こそ違うもののみっちゃんの大学も住んでるところも近い為、こうして会える日は毎日でも集まって女子会をする程の仲良し。

「んー…」
「そうやっていつまでも唸ってたら朝になっちゃうよー?」
「だってさー…」
「あーじれったいっ!!携帯、貸してっ」
「あっ!!」

しびれをきらしたみっちゃんが
半ばムリヤリゆりなから携帯を奪い文字を打ち始める。

「よし、出来た。そーしんっ。」
「あーっ!!ちょ、みっちゃんっ」
「うっそ。まだ送信ボタン押してません。最後は自分で押しな。」
「あーびびったー…」

…なんてゆーか。
みっちゃんって中学の頃から姐さん気質なんだよねー

「あ、そーだ。いいこと考えたっ」
「「え?」」

携帯とにらめっこをしていたゆりなが
突然、目をキラキラさせながら私たちを見つめる。

「みっちゃんとあゆなも、誰かにメール送ろうよっ!!」
「…なんで、その結論に辿り着いた?」

みっちゃんの冷静なツッコミに私も大きく頷く。

「だってー赤信号もみんなで渡れば怖くないっていうしー?」

「や。それ、違うから。」
「だいたい、私はメール送る相手なんかいないし。」
「またまたぁっ!!こないだ、みっちゃん気になる先輩いるって言ってたじゃん。」
「えっ!!そーなのっみっちゃん!?」
「…ちょっとかっこいいなーって思っててー…いや、けど別に好きって訳じゃなくて憧れっていうか…」

普段、ハキハキしてるみっちゃんが言葉を濁すなんて珍しいー…

「あ。今、あゆな私のこと珍しいって目で見たでしょ?」
「…っいやいやいや。そんなこと、ないよ?」
「図星だー。てゆーか、あゆなこそ好きな人とかいない訳ー?私、あゆなの恋バナ聞いたことないんだけどー?」
「恋バナねー…」
「あゆなは、まだ遥輝センパイの事が好きなんだよねー?」
「こらっゆりな!!あんた、口軽すぎっ」
「いーじゃん、いずれバレるんだし。」
「そーいう問題じゃないっつーのっ!!だいたい、今はゆりなのメールが問題でしょーがっ」
「…トイレ行ってきまーす」
「あ、こら逃げんなっ…たくっ…」

廊下へと向かうゆりなの背中を見てため息をつき
テーブルの上のスナック菓子へと手を伸ばす。

「…遥輝センパイって、高校の?」
「あー…うん。まぁね。」
「へぇーいつから?」

みっちゃんもスナック菓子を摘みながら
私の隣へと移動する。

「…自覚したのは高2の6月くらいかな?」
「へぇー結構、一途なんだー。告白は?」
「みっちゃん…めっちゃ聞いてくるね…」
「ダメ?」
「や、別にダメって訳じゃないけど…改めて聞かれると恥ずかしいというか…」

しかも普段、恋バナ聞く側だから尚更…

「で?コクったの?」
「告白は…したけど…フラれた。っていうか、わかってたんだけどねー。何となく。」
「何となくって?」
「センパイのこと見てれば、実華のこと好きなの一目瞭然だし。ましてや、実華の一番近くにいたのも私だしね。」
「実華とあゆな、ホント仲良いもんね。幼稚園の頃からの幼なじみだっけ?」
「ホント腐れ縁っていうか何というか。」

そう。
私の幼なじみの佐藤実華は幼稚園、小学、中学、高校と全て同じクラスという奇跡的な中で親友と呼べる存在。
高校卒業してからの進路はさすがに違ったけど今もしょっちゅう連絡を取り合ってる。

そして、山崎遥輝センパイは
今、話題になったとおり私の好きな人。

実華とセンパイは同じ委員会で
たまたま皆、帰る方向が同じだったから3人で何度か一緒に帰るうちに私はセンパイに惹かれていった。

…と同時に実華を見るセンパイの目が特別な感じがしたのにも気づいてしまった。

「…あれ、ちょっと待って。実華って高校の時、彼氏いたよね?確か、同じ部活の…」
「石井でしょ?」
「そーそーっ隣のクラスの女遊びが激しいやつ。」
「みっちゃん…どーなの?そのイメージ。」

まぁ、あながち間違いでもないんだけど…

「…確かに、石井の浮気問題とか色々浮上してたからねー。実華と付き合ってた頃。」
「私、あーいうやつ大嫌いっ何か不潔だし。」
「みっちゃん、それ高校の時から言ってるよね。」
「だって嫌いだし。」
「あはは…」
「あーっ!!」
「っ!?」
「何っ!?」

石井の悪口に花を咲かせていると
トイレの方からゆりなの叫び声が聞こえてきた。

「ゆりなっ!?」
「どうかしたっ!?」
「あゆー…みっちゃんー…」

私たちが駆けつけると
ゆりなが廊下でうずくまっていてその手の中には携帯があった。

「ゆりな…もしかして…携帯、トイレに落としたとか?」
「……。」

ゆりなはみっちゃんの問い掛けに静かに首を横に振る。

「じゃあどうした?」
「メール…」
「メール…?」

私はゆりなから携帯を受け取り画面を確認する。
そこには送信完了の文字。

「あ。」

どうやら、何かの拍子に誤ってボタンを押してしまったらしい。

「なになにー?」

みっちゃんも携帯を確認すると同時に全てを理解したらしく

「良かったねー日付変わる前にメール送れて。」

という言葉を残し、部屋へと戻っていった。

「よくないよーっ心の準備、出来てないしー」
「まぁ確かにあの様子じゃいつまでたってもメール送れなかっただろうし良かったっていえば良かったんじゃない?こんなとこいても仕方ないし、ウチらも部屋戻ってメール待ってよ?」
「…うん。」

私も半泣きのゆりなをなだめながら
部屋へと戻る。
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