なにぬねのんびり屋
「俺、できるかな…」
「何を弱気になってんのよ?できるかな?じゃなくて、やるの。あなたが傷をつけた分、謝って謝って、あなたが考えたことをしっかり話して、こらからどうしていくかはその後決めなさい。」
ひぐち君らしからぬよわよわ発言に、頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。
「ひぐち君は、変わったんだよ。」
一年生の頃のひぐち君は残念ながら見たことがないけれど、今のひぐち君のことならよく知っている。
元気で人懐こくて、さり気ない気配りができて友達を大切にするイイ奴だ。
「だから、自信持ちなさい。」
頭を撫でていた手で頭を押さえ、しっかりと目を合わせる。
ひぐち君の顔が、へらりと力を抜いた。
「うん。俺、頑張ってみる。」
まだ少しぎこちないけれど、いつものように笑顔をみせるひぐち君にホッとする。
「あっ…!!」
スッキリとした面持ちでドアを出ようとするひぐち君に、慌てて一言付け加えた。
「昨日、気づいてあげられなくてゴメンね。」
昨日も会っていたのに、全然変化や動揺に気づかなかった。
あたしもまだまだってことだ。
もっとよく見ていたら、気づいてあげられることもいっぱいあるのに。
「んーん。センセ、話聞いてくれてありがと。ちゃんと伝えてくるから、そしたら明日も頭撫でてくれる?」
「もちろん!」
ぬるま湯から出て、成長したひぐち君を待ってます。
END