なにぬねのんびり屋
後ろから聞き慣れた声が飛んできた。
生徒会長の役目を終えた俺のことを‘会長くん’などと悪気なく親しげに呼ぶのは一人だけだ。
振り返ると、ベンチに座ってこちらに手を振る希美先生。
あの頭は先生だったのか。
「もう授業始まっちゃうよ?」
ベンチに近づくと、ニコニコと話しかけてくれる。
高過ぎず、穏やかな声色は俺の頭痛に優しく語りかける。
「サボりです。」
「おや、やっぱりなんか変だねぇ。どうかしたかい?」
サボると聞いても頭ごなしに注意するでもなく、のんびりと事情を聞いてくれる。
ここに来て正解だったな。
「大丈夫ですよ。何もありません。」
「ふむ、まぁ座りたまえ」
予鈴があたりに響く中、教室に戻れじゃなく、隣に座れという教師がどれだけいるのだろうか。