なにぬねのんびり屋
きっちり絶品のケーキまで美味しくいただきまして、もうこのまま大学に戻ってしまう要を駅までお見送りすることになった。
「気をつけてね。次はいつ帰ってくるの?」
「まだなんとも決めてないけど、正月はこっちで過ごすかな」
「そっか。じゃあその時は圭介くんたちも呼んでみんなで飲みに行こう。ちゃんと連絡してよね?」
「おー、幹事よろしく」
「幹事やるのは面倒だなぁ…」
新幹線で帰るなんてリッチな奴だな。
電車でのんびり行くのもまた楽しかろうに。
すでに新幹線の切符は買ってあるらしく、荷物をロッカーから取り出したらそのままホームに直行みたいだ。
もう少しゆっくりしてけばいいのに。
「あのさ、最後に一個ちゃんと聞いてほしいんだけど」
「…んー?なにかなー要くん?」
「もう誤魔化されてやんねーよ。
……あのな、俺、今までズルズルとお前のこと好きでいたんだけど、今日でもうやめるわ。もう人妻になっちゃったしな。
あ、変な気は使うなよ?次会う時は、ちゃんと友達として来てやるから、今まで通り、アホみたいな顔で先輩との惚気でも聞かせろ。」
「…ふは アホみたいな顔でって失礼じゃない?
でも…うん。わかった。いっぱい惚気てやるから覚悟しといて」
「おう、そうする。あー…、言わなくても心配ないと思うけど…お幸せに」
「ありがと。……ありがと。」
最後にあたしの頭に手を置き、髪をぐしゃぐしゃに掻き回してからそっと離れて行った存在。
「じゃ、行くわ」
「うん。またね」
手を振るあたしに情けなくはにかんだ。
だからあたしも同じようにはにかんだ。
最後の笑顔が、今まで見た要の中で一番綺麗だったって言ったら、怒られるかな。
少し時間が経って、このことが笑い話になるくらい大人なったら、教えてあげようっと。
それで怒られたら、それはそれで。
END