なにぬねのんびり屋
「センセ、入っていい?」
勉強会のない放課後、英語科準備室のドアを静かにノックしたのは、なんだか様子がおかしいひぐち君。
「うん?どうぞ?」
隅っこにおいてあるイスを出して静かに入ってきた彼に座るよう促す。
いつもの元気はどこに行ったのか、落ち込んでいますと顔に書いてある。
「どうしたのよ?」
「あのさ、センセ、…相談があるんだ。」
一度待ったをかけ、珍しくしおらしいひぐち君に暖かいコーヒーをいれてあげると、小さく「ありがと」と呟いて、一口。
本当にどうしたんだろう。
「どうした?何かあったの?」
ひぐち君が座るイスに並ぶように近づき、俯くひぐち君に目の高さを合わせる。
目が合うと、ひぐち君はクシャッと顔を歪め、苦々しく呟いた。
「俺ってさ、幸せになっちゃいけない人間なんだって」