遠距離恋愛



「だって家具も全部持ってったじゃない!」

「だからって、でも、俺だってたまには帰って来るし!

ゆっくりする場所くらい残しといてくれよ!」

「まあまあ…」


軽く口喧嘩になってきたので、翔の方を宥めた。


「あんたの話なんてどうでもいいわよっ。

それよりも、久しぶりね茉柚ちゃーん!

すっかり大人っぽくなっちゃって!

こんな美人あんたには勿体無いわ~」


翔の母親は、いかにも"主婦のおばさま"という感じの賑やかな女性だ。


「翔なんか居なくていいから、いつでも家にいらっしゃいよ!

翔の好きな料理いーっぱい教えてあげるから!」

「はは…、じゃあ今度伺いますね」

「ええ!ケーキと紅茶でも楽しみながら、

翔の子どもの頃の恥ずかしい話しましょ!」

「母さん!! 息子を売るなよ!!」

「あんたより娘のが大事よ!」

「まあまあ…」



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