遠距離恋愛
「ほら、家族にはなかなか言えないような事もあるんでしょ、きっと。
あの子、翔くんにすっごく懐いてるし…高校受験の時もそうだったじゃない」
大が高校受験の事で悩んでいた時、
相談に乗っていたのは翔だった。
科学が好きな大の為に、授業で科学コースを置き、
科学部の活動が盛んな高校を提案してくれたのも翔だ。
「…大、友達少ないもんねえ…」
「無愛想だからねえ。言葉足らずなのよ、あの子。お父さんに似てね」
くすりと微笑んだ母は、「はい。これ、置いて来てね」と、
茉柚にケーキと紅茶のカップが2つ置かれたお盆を手渡した。
こっそりと部屋の中の様子を見てみると、
ふたり共真剣な表情で。
それなりに一緒に居たのに、
弟が悩んでいた事に気づけない自分を不甲斐無く思った。
静かにお盆を置いて、リビングに戻る。
「話してた?」
「うん。大ももう進路なんて考えてるんだね」
「あの子はしっかりしてるから」