君ともう一度。
【1】 小さな想い

6月の憂鬱






「かーやっ!一緒に帰ろう?」

担任の号令の合図と同時に私に駆け寄るのは、友達の佐々木 芹。


「あれ、今日は部活ないの?」

「そうなのよ。来週に変更になっちゃった」

「じゃあ、ちょっと図書室いってもいい?本返さないとなんだ〜」


すぐに帰る支度をし、私、香取 夏耶と芹は教室を出た。


廊下には私たち同様に帰ろうとしている生徒の群れが、ちらほらいる。

高校に入学してから2ヶ月。

まだまだ知らない人ばっかり。


そんな人たちの中にいると、私はすぐにキョロキョロしてしまう。



「あ、また探してる!」


ーードキッ


芹に言われてビクッと肩を鳴らす。

分かってはいるのになかなかやめられない。


君を探すことを。



「キャハハッ!!本当。ゆうすけって面白いよね〜」




甲高い声が私たちに向かって歩いて来る。

その名前に反応してしまう。


「あ……」


たぶん、彼はわたしに気づいていない。


少し派手めな女の子と男の子とこっちに歩いてくる。

黒髪の君。



「お前、本当に馬鹿だよね〜」


なんて、ケラケラ笑っている。


「夏耶……」



私の横を通り過ぎて行く彼は、一度もこっちを見なかった。

私の視線はその通り過ぎて行った彼をそのまま追いかけているのに。



葉山 祐介。


私の幼馴染である。


今ではほとんど口を利かない。





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