君ともう一度。




「じゃあねー」

「うん、また明日ね」


芹とは電車が逆方面だから、改札で別れて一人で帰る。

フードコートには気づくと祐介の姿はなかった。

先に帰ったのか、他の場所に移動したのか。

駅にいないことを確認して少し残念な気分になる。


まあ、いたとしても話すことはないんだけど。


「○○駅〜○○駅〜」


ホームにアナウンスが流れ、人の流れに乗るように電車に乗り込む。

車内はほぼ満員。

仕事帰りのサラリーマンや帰宅途中の学生でいっぱいだ。



「いてっ」


あまりの混み方に私は前の人足をおもいっきり踏んでしまった。


「あ。ごめんなさあ!!」


驚きとともにその人の顔を見た。


「あ……」


思わず声が漏れた。

さっきまで辺りにはいなかったのに、突然現れた。

驚きで、それ以上なにも声を発せない。


「…今、帰り?」

「え、」


まさか話しかけられるなんて思わなかったから目を丸くしながら祐介を見た。

祐介は何食わぬ顔で私を見ている。

少し、背が伸びた気がする。

声も前よりも低くなっている。


胸がザワザワする。

あ、泣きそう。


「と、友達と遊んでたから」


そう言いながら下を向いた。

こんな顔、見られたくない。

恥ずかしい。



「お前さ、女なんだからもう少し気をつければ?」

「気をつけるって、まだ7時前だよ!?」


心配性なのはあいかわらずらしい。


「……まあ。俺には関係ないけど」


冷たい言い回し。

3ヶ月も話してないとうまく話せない。


祐介が今どんな顔をしているかなんて、下を向いている私には分からない。


今、どんな気持ちかなんてもっと分からないけど。







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