炭酸アンチヒーロー番外編
「ヒロく、ひっく、ご、ごめんなさ……」

「いや、悪いのはどう考えても俺の方なのに、なんでまおがそんな申し訳なさそうなカオしてんの?」

「だ、だって私、ヒロくんのほっぺ、叩いた……!」



宥めるように髪を撫でてやると、嗚咽混じりにそう話す。

俺は、ひとつ息をついた。



「それは、俺がまおに叩かれるようなことしたからだろ。つーか、こんなん全然痛くねぇし」

「うっ、嘘だっ! だってちょっと、赤くなってる……!」



そうなのか? 自分ではほんとに平気だから、わかんねぇ。

そんなふうに思いながらも、俺はぎゅっと、彼女を抱きしめる腕の力を強くした。



「……ごめん、まお、悪かった。まおが人前でああいうことされるの、嫌だってわかってたのに」

「………」

「柳川と楽しそうにしゃべってるの見て、頭に血ぃのぼった。ほんとにごめん」



そう言って、かっこ悪い自分にいい加減耐え難くなっていた俺は、まおの首筋あたりに顔をうずめる。

おずおずと、彼女も手を伸ばして……俺の背中を、やさしく上下に撫でた。



「……ヒロくん、ヤキモチ妬いたんだね」

「……まあ、簡単に言えばそうなる」

「ヒロくんの話、してたのに?」



え、と顔をあげて、腕の中の彼女を見下ろす。

まおは、照れくさそうに笑っていた。
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