炭酸アンチヒーロー番外編

反則技が得意技

「……なに?」



ある休日、映画館にて。

館内の座席に落ち着いて間もなく、となりから感じた視線に、俺は疑問の表情を隠すことなくそう訊ねた。

言われた当人の蓮見も、なぜか不思議そうな顔をしていて。



「えっと……なんか、今さらだけど辻くんがウーロン茶って意外だなあって」



辻くんって、なんとなくコーラとかサイダーって感じだから。そう付け足しながら、彼女は自分の紙コップから伸びるストローを口に含む。

そのせりふに、ついついできる眉間のシワ。



「……俺、コーラ好きじゃない」

「え?」



ボソリと俺が呟くと、一瞬、蓮見は驚いたように目をまるくする。

だけどすぐ、なぜだかくすくすと笑いだした。



「あはは。辻くん、コーラ苦手なんだ?」

「………」

「え~、意外だなあ」



そう言う蓮見の笑顔はかわいい、って、絶対このタイミングで思うことじゃないよな。うん。

俺がコーラ嫌いで、どこがそんなにおもしろいのか。……とりあえず、小さい頃親に冗談で「コーラを飲むと骨が溶ける」と言われたことがきっかけだなんて、絶対に教えないでおこう。
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