炭酸アンチヒーロー番外編
密かにそう決心しつつ自分から話題を逸らそうと、彼女の手元に視線を移した。
「蓮見のは、」
「ん? オレンジジュースだよ」
笑みを浮かべた彼女が答えた瞬間、ふっと室内の照明が落とされて。
近距離のものしか判別しにくくなったその状況に、ちょっとしたイタズラ心が沸き起こる。
「……蓮見、」
蓮見が、俺の呼びかけに反応して口を開く前に、その首筋へ手を伸ばした。
そして彼女がそれを理解する前に、距離を詰めて唇を塞いでやる。
ふわ、と移る、柑橘の味と香り。
「……うん。キスの味も、絶対コーラよりオレンジジュースの方がいい」
何が起こったのかわからないというように呆然としていた蓮見は、俺が耳元で言い放った囁きを聞いて、暗がりでもわかるくらい一気に顔を赤く染めた。
だけどやはりすぐには言い返せないのか、会話にならない音ばかりが飛び出す。
「つっ、なっ、きっ、き……!?」
「木?」
「なっ、何を──」
「手っ取り早く口塞いだ。それが何か?」
「は、はんそくです!」
真っ赤な顔で涙目になりながら反論してくる蓮見は、ここが公衆の面前じゃなかったらどうにかしてしまいそうなほどかわいい。
――あれが反則? そう言うなら、正攻法って何? じゃあ、邪道って?
「もー……辻くんといるといっつもどきどきしすぎて、心臓に悪い」
「……うん、そういうこと言うのも反則だと思う」
「?」
……つまりはそんなこともわからなくなるくらい、目の前の彼女がすきってこと。
反則技が得意技
(お互いが弱点ってどうしようもない)
2013/05/24
「蓮見のは、」
「ん? オレンジジュースだよ」
笑みを浮かべた彼女が答えた瞬間、ふっと室内の照明が落とされて。
近距離のものしか判別しにくくなったその状況に、ちょっとしたイタズラ心が沸き起こる。
「……蓮見、」
蓮見が、俺の呼びかけに反応して口を開く前に、その首筋へ手を伸ばした。
そして彼女がそれを理解する前に、距離を詰めて唇を塞いでやる。
ふわ、と移る、柑橘の味と香り。
「……うん。キスの味も、絶対コーラよりオレンジジュースの方がいい」
何が起こったのかわからないというように呆然としていた蓮見は、俺が耳元で言い放った囁きを聞いて、暗がりでもわかるくらい一気に顔を赤く染めた。
だけどやはりすぐには言い返せないのか、会話にならない音ばかりが飛び出す。
「つっ、なっ、きっ、き……!?」
「木?」
「なっ、何を──」
「手っ取り早く口塞いだ。それが何か?」
「は、はんそくです!」
真っ赤な顔で涙目になりながら反論してくる蓮見は、ここが公衆の面前じゃなかったらどうにかしてしまいそうなほどかわいい。
――あれが反則? そう言うなら、正攻法って何? じゃあ、邪道って?
「もー……辻くんといるといっつもどきどきしすぎて、心臓に悪い」
「……うん、そういうこと言うのも反則だと思う」
「?」
……つまりはそんなこともわからなくなるくらい、目の前の彼女がすきってこと。
反則技が得意技
(お互いが弱点ってどうしようもない)
2013/05/24