炭酸アンチヒーロー番外編

ドキドキオレンジ。

「そいえばはすみん、もう辻っちとちゅーした?」



突然の佳柄のそんなひとことに、私は一瞬の硬直後、勢いよく彼女へと顔を向けた。



「かっ、佳柄?! いいいいきなり何言って……!!」

「あ、その反応はまだくさい?」



おそらく顔を真っ赤にして動揺している私の様子に、佳柄はへらりと笑う。

そんな私たちのやりとりを見て、向かいに座る沙頼は苦笑いだ。



「ちょっと佳柄、いくらなんでも直球すぎ」

「えー、だってさよちぃも気になってたっしょ?」

「まあ、そりゃあねー」

「ちょちょちょ、ふたりとも……」



のんびり繰り広げられるふたりの会話に、思わずつっこむ私。

頬は未だに熱くて、少しでも冷まそうと両手をあてた。



《──今日、いつもより早く部活終わるから。待っててくれたら、一緒に帰れる》



お昼休み中、今まさに話題にのぼっている人物……辻くんにぶっきらぼうな態度ながらもそう提案されて、私はふたつ返事でOKを出した。

そして教室で彼を待つ私に付き合って、仲のいい沙頼と佳柄も放課後の教室に残ってくれている、んだけど……。



「ちゅ、ちゅーだなんて、そんな……」



言いながら、またかーっと顔が熱くなる。

しどろもどろな私に、それでもふたりは、楽しげな様子で会話を続けた。



「だってー、付き合い始めて2週間目って、ねぇ?」

「そろそろあっても、おかしくないもんねー?」

「や、やめてよぉ、ふたりとも……」



そのときちょうど、制服のポケットで震える私のケータイ。

画面を確認すると、話題の彼から【今終わった。生徒玄関で待ってるから。】とのメールが。

ケータイのディスプレイを見つめる私の表情で何か察したのか、にんまりとふたりが笑う。



「辻っち、でしょ?」

「がんばってね~」

「う、あ、……ま、また明日ね、ふたりとも」



わたわたとケータイをしまい、カバンを肩にかけた私は。

意味深な笑顔を浮かべるふたりへの挨拶もそこそこに、慌ただしく教室を出たのだった。
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