炭酸アンチヒーロー番外編
「琴里ー?」



言いながら、負けじと俺も、軽く背中に体重をかける。

すると琴里は、握った手に少しだけ力を込めて。

悠介、ともう1度呟いた。



「……もうすぐ、夏だねー」



──ああ、そっか。

どこかうれしそうな彼女の言葉に思わずふっと笑みをこぼして、またぎゅっとその小さな手を握り直す。

琴里も俺も、小学生の頃から野球一筋。……俺らが1番熱くなる季節がくることを、彼女も胸を焦がしてずっと待ち望んでいたのだ。



「──うん。絶対、今年も泣かせてやるから」

「ふふっ。……うれし泣き?」

「もちろん、うれし泣き」



そう言って軽く後ろ頭を当てると、琴里はまた楽しげにくすくす笑う。

ローテーブルに置いていた麦茶の氷が溶けてグラスにぶつかり、カラン、と涼しげな音をたてた。


──空が青い。となりには君。

さあ、今年も夏がくる。







サマータイムラバー
(俺のボールを受けとめてくれるアイツと、俺を信じて応援してくれる君がいれば)(それだけで俺は、きっと無敵だ)




2013/05/14
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