炭酸アンチヒーロー番外編
君の名前、君の声
※『君の声、君の名前』辻くんサイド
やたら長く感じた学校祭実行委員の会議が終わり、足早にセミナー室を出る。
数メートル先でぼんやりと廊下の壁に背を預けている彼女を見つけ、「まお」と俺は声を掛けた。
「辻くん、」
「わり、待たせた」
そう言って俺が詫びると、まおは「そんなことないよ」と首を振って笑う。
生徒玄関に向かおうと視線で促し、そのままふたりで歩き出した。
しばらくは、廊下を歩きながらの他愛もない会話が続く。
けれども不意に彼女を見下ろしたときに、ふたりの視線が交わり──彼女が緊張した声音で、疑問符付きに俺の名を呼んだ瞬間。
それまで引っかかっていた疑問が、つい口から滑り落ちた。
「なあ、おまえは、名前で呼んでくれないの?」
「……ッ!」
俺のせりふに、明らかな動揺を見せる彼女。
頬を紅潮させ、目を泳がせて次に自分が言うべき言葉を必死に探しているように思える。
──まあ俺だって、彼女を名前で呼び始めたのはつい先日からだけど。
困惑している彼女の様子をわかっているのに、俺はまた、追い討ちをかけた。
「俺は、名前で呼んでほしいと思ってるんだけど」
駄目押しに「ダメ?」なんてささやきつつ、自分よりも大分低い位置にある顔を覗き込む。
そんな俺に対する彼女は、緊張がピークに達したのかもともと色づいていた顔をさらに紅く染めて。
それから、何かを決意したように、キッと俺の顔を見上げた。
やたら長く感じた学校祭実行委員の会議が終わり、足早にセミナー室を出る。
数メートル先でぼんやりと廊下の壁に背を預けている彼女を見つけ、「まお」と俺は声を掛けた。
「辻くん、」
「わり、待たせた」
そう言って俺が詫びると、まおは「そんなことないよ」と首を振って笑う。
生徒玄関に向かおうと視線で促し、そのままふたりで歩き出した。
しばらくは、廊下を歩きながらの他愛もない会話が続く。
けれども不意に彼女を見下ろしたときに、ふたりの視線が交わり──彼女が緊張した声音で、疑問符付きに俺の名を呼んだ瞬間。
それまで引っかかっていた疑問が、つい口から滑り落ちた。
「なあ、おまえは、名前で呼んでくれないの?」
「……ッ!」
俺のせりふに、明らかな動揺を見せる彼女。
頬を紅潮させ、目を泳がせて次に自分が言うべき言葉を必死に探しているように思える。
──まあ俺だって、彼女を名前で呼び始めたのはつい先日からだけど。
困惑している彼女の様子をわかっているのに、俺はまた、追い討ちをかけた。
「俺は、名前で呼んでほしいと思ってるんだけど」
駄目押しに「ダメ?」なんてささやきつつ、自分よりも大分低い位置にある顔を覗き込む。
そんな俺に対する彼女は、緊張がピークに達したのかもともと色づいていた顔をさらに紅く染めて。
それから、何かを決意したように、キッと俺の顔を見上げた。