偽善愛で夢を見て。
なんだ、お前か。
言われた言葉の冷たさに、紅だと気付く。
オバサンとオジサンの靴がない。
「ジジィとババァなら居ねぇぞ。旅行だからな。」
「ねぇ。紅は今、彼女いる?」
覆い被せるように言葉を紡ぐ。
届かなくていい。
胸を打つ、焦燥感を消してくれるだけで。
いない、と言われた瞬間からだは動く。
何人もの男に、偽りの愛を送ってきた唇で紅の口を塞いだ。
目を瞑ったから判らないが、驚いているのではないだろうか。
俺様な紅が、顔を見せた。
乱暴に抱き上げられ、ベッドに落とされる。
激しいキス。
思考回路を麻痺させて。
考えることをさせないで。
今はただ、私だけを見て。
私を、独りにしないで。