偽善愛で夢を見て。
ろく。
「いやぁああああああああああ!」
耳を塞いで息を止めて目を瞑る。
もう、あんな姿は見たくないから。
血だらけで横たわる人なんて、見たくない。
狂う私の腕を、掴むのは。
「掠り傷だ馬鹿。」
馬鹿、と紅に言われるのは心外だ。
喧嘩に関しては紅が一番賢いかもしれない。
だけど、相手を傷付けてボロボロにして血だらけにして。
何がいいのか判らない。
判りたくもない。
紅は、人殺しになりたいのだろうか。
「お前、病院脱け出すなよ。
ババァもジジィもあいつらも探し回ったんだぞ。
どれだけの人巻き込んで心配させれば気が済むんだ。
突然人の家の三階から飛び降りやがって。
翠が失神しそうになったんだぞ。
聞いてんのか。」
さっきから、聞いてる。
でも、結局。
貴方たちだって偽りの愛じゃない。