偽善愛で夢を見て。
家族には恵まれていた。
お金もある。
容姿も、申し分ない。
猫を被るのも上手なはずだ。
世渡り上手を目指していた訳じゃない。
うわべだけの関係も、嫌いじゃない。
『ばいばい。良い人生を』
お決まりの言葉を吐き捨ててボロのアパートから出た。
2階へ続く階段からは鉄錆びの臭い。
顔と体の相性は良かったから惜しい。
なんて、心にもないことを思った。
彼氏と、セフレと、別れる度に行く所がある。
初めての彼氏の家。
彼が他の女を連れ込んでいるのを見たことがない。
私はというと。
セックスの為に無理矢理上がり込んでやった。
そういう彼女は私以外にもいたのかもしれない。
見たことがなかったし、気にしたことがなかったけど。
彼と別れた理由はシンプルだ。
好きになれない。
体の相性はいいのに、心は全く寄り添おうとしない。
私の場合、いつもそう。
体ばかり先走って、心が追い付かない。
普通は、逆だとも知らずに。