コイゴコロ
パーカーを返してから一週間。
もう私が城山君と関わる事はないだろうという気持ちからだろうか、
晴美やクラスの子たちが城山君の噂をしても、城山君が近くに居ると騒いでいても、
私には興味ないので皆と一緒に騒ぐことも無く、話題の一つとしてやり過ごしている。
特に嫌っているわけでは無いけど、騒ぐほど興味を注ぐものじゃない。
それよりもクラスメートの名前を覚えたり、教室の場所を覚えたり、授業に慣れたり、外部入学生の私には他に集中しなければならない事が沢山あった。
「有紗、理科室だから行くよ!」
既に教科書とノート・筆記用具を抱えた晴美に急かされ、私は急いで授業の準備をした。
他のクラスメートもぞろぞろと移動し始める。
私と晴美もその波に飲まれる様に廊下へ出た。
少し歩いていくと、前方の女子が『キャー』と騒ぎ始めた。
悲鳴のそれじゃなくて歓声のそれに、なんとなく予想する。
「城山君だ」
背伸びをしながら前方を見た晴美も歓声を上げる。
どうやら、前の時間に理科室を使っていたのが1組らしい。
1組の人たちが出てこないと私達4組は入れないので、1組の人たちが出終わるのを廊下で待つ。
うちのクラスの女子が待っているのは城山君だけなようだが。