コイゴコロ
「すげー人気だな~城山優」
いつの間にか私の隣に立っていた松島 太一(まつもと たいち)君。
彼は同じクラスで同じ外部受験者だからか、お互い親近感が湧いて仲良くなった友達だ。
「だね。女子の殆どが騒ぐ光景とか、中学時代見た事無かったよ」
「俺の学校でもなかったわ…この光景を中学のダチに言ったら信じてもらえなかった…」
遠い目をしながら目の前で女子が騒ぐ光景を眺めている私と太一。
ただ同じ高校生が通るだけなのに、『皆城山君を近くで見たい』『あわよくば、お近づきになりたい』と女の欲が爆発している。
「そういえば、部活どうするの?美術部入るの?」
唐突に聞いてきた太一。
太一は、中学の時に芸術部へ入っていたらしい。
それなので私が高校生のコンクールで最優秀作品になったのも名前も知っていて、
初めて話した時も『佐々木有紗って、美術とかやってない?』という聞き方をしてきたのだ。
「俺は趣味程度で描いてただけだから、高校では勉学に励むことにするけど…
もし画家目指してるんなら、部活よりも先生のところに通った方が良いと思う」
「………」
絵を描くのは好き。でもプロを目指しているのかと問われれば、答えは『わからない』のだ。
今はただ自由に描いていたい。自由に描けるからこそ私の絵が出来上がるんだと思う。
親も先生も『将来は画家に…』なんて言ってたけど、当の本人は絵を描くことをまだ趣味としか考えられないんだ。