コイゴコロ
「美術部入ってみようかな…」
ぼそっと呟くと、太一が何か話す前に『有紗~!』と大きな声で呼ばれる。
いつの間にか1組は出ていったらしく、城山君を見送った晴美が戻ってきた。
「理科室入ろう。あ、太一も一緒だったんだ。理科室もう入れるよ~」
私たちはそれから部活や画家の事を話すことなく理科室に入った。
ただ理科室に入る直前、『ゆっくり考えろよ』と言うように太一が私の頭をポンポンと軽く叩いて行った。
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授業が終わり理科室から出ると、次に使うクラスが廊下で待っていた。
何だか俺の顔を見た途端に女子が声を上げていたけど、
いつの事なので気にすることもなく歩いていく。
階段近くに差し掛かると、女子が大きな声で『有紗~!』と呼んでいる声が聞こえて、咄嗟に振り返る。
有紗……佐々木有紗……
振り返る先にある理科室に入っていく次のクラスの群れの中に見つけた一人の女の子。
その子は隣に居る男子に頭を触られながら入って行った。
「優?行くぞー」
中等部からの親友、諏訪 充(すわ みつる)に呼ばれて俺はまた階段に向き直った。
「…充ー」
「んー?」
「理科室次に使うのって何組?」
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