コイゴコロ
「部活動見学は今日から2週間行わるから、各自回って見学するように。部活が決まったら、今配った用紙に記入して顧問の先生か部長に渡す事」
帰りのHRで配られた白い紙。そこには名前と部活名を記入するものだった。一番上には大きく『入部希望』と書かれている。
先生が教室から出ていけば、友達と集まって『どこ見学しに行く?』なんて相談しているクラスメート。
「晴美は部活やるの?」
前の席にどっぷり座る晴美に聞けば、
「私はアイドル研究部だよ」とスラッ答えた。
………。
「ごめん。聞こえなかった。変な雑音が聞こえた。研究部なの?」
「うん。アイドル研究部ね。ア・イ・ド・ル」
もう一度、今度は強調して言った言葉に私は自分の耳を疑うのを止めた。
「それはつまり、皆でアイドルを語る的な?」
「まあね。でも今の世の中アイドルって言っても色々居るから、
自分の好きなアイドルにドップリ浸る感じかな。
中学の時アイドルの追っかけ仲間だった先輩が作った部なんだ!
この学園って入るのは難関って言われてるけど、入っちゃえば自由なところ多いからね~」
晴美は『今日もう入部しちゃうんだ~』なんてウキウキしながら、授業中に教科書のように読んでいたアイドル雑誌をカバンの中に閉まった。
「有紗はどうするの?」
「私は、一応見学だけ美術部に行ってみる」
「あ!じゃあアイドル研究部の部室の隣だから一緒に行こうよ!」
晴美の誘いに私は内心ホッとした。
まだ教室と移動教室の少しを覚えただけで、美術室の場所まで覚えてなかったんだ。
同じく美術部に行くって子が居ないかな…なんて考えていたから、
校舎に詳しい晴美のこの誘いは心強い。